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三谷てるみの「美肌学」
● 第2回 香粧品科学会レポート
 過日、6月8・9日に東京 新橋のヤクルトホールで“第25回 日本香粧品科学会学術大会”があり、今回、私は研究発表をしなかったので気楽な気持ちで出席して参りました。
香粧品科学の最先端の話題の一端をご報告致します。
 今回で、25回目という区切りのしかも20世紀最後の学会ということで、盛大でしたし、また功労者の表彰などもありました。
シンポジウムのテーマは“21世紀へ向けた角層研究の幕開け”で、第一日目“1 角層研究の最前線”、 第二日目“2 角層機能からみたセンシティブスキン”でした。

“1 角層研究の最前線”
 現在角層は以前の“死んだ細胞の層”という観念ではなく、活き活きとした存在である事が確認されています。たった0.02ミリ、サランラップ一枚の厚さながらも、中のものを外に出さない・外のものを中に入れない・・・というバリア機能を有しています。光学顕微鏡ではその下の表皮細胞ばかり見ていましたが、電子顕微鏡のお蔭で、細胞内の構造が明らかになるにつけ、表皮細胞が角層になるために、ケラチン蛋白線維を作っていく様がよくわかりました。今回も角化(角層になっていく)過程でさまざまな酵素や化学伝達物質の存在と作用が説明されました。

“2 角層機能からみたセンシティブスキン”
 シンポジスト達が、センシティブスキンを定義して行く中で、スティンギング(
*1)のことが取り上げられ、私が12年前の第13回学術大会で報告した研究論文(日本で最初のスティンギングの論文で、スティンギングとはどういうものかを定義しています)が参考文献で取り上げられました。いち早くセンシティブスキンを専門に角層に注目して研究して来たことがやっと多くの研究者のコンセンサスを得られた事に喜びを感じました。
敏感肌あるいはセンシティブスキンという言い方は医学的ではなく、きちんとした定義がなされておりません。私は、15年前に“アトピー性肌”と“接触皮膚炎の既往症のある肌”と定義し、エステティシャンの教育用テキストを書いた事があります。やはり今回のシンポジウムでも、皮膚科医は私と同じ定義でした。
また化粧品の業界で何気なく使っている“センシティブスキン”や“敏感肌”という言葉の指す内容を調査すると、皮膚科医と患者さんでは全く違う事も判りました。皮膚科医は“乾燥肌を中心にアトッピクスキン(アトピー肌)やかぶれ易い肌”を指すと考えています。ところが患者さんではニキビや脂漏性皮膚炎(自分の皮脂にかぶれて炎症を起こす)のような脂性の肌も入っています。原因は何であれ、トラブルを起こし易い肌全部を指すようです。

 ところで、私がずっと取り組んできた“敏感肌”は“アトピー素因を持つ乾燥肌”のことです。元々皮膚科の臨床から出発した私は、やはり言葉の定義も皮膚科流になってしまうようです。今後もそのような解釈で研究を進めていこうと思っております。


*1)スティンギング【 stinging 】:化粧品を塗布した時に塗布部にチクチクする皮膚感覚があること。
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●開発者紹介> 三谷てるみ | 美肌学