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三谷てるみの「美肌学」
● 第7回 アトピーについて その2“アトピー肌のお手入れ”

アトピーとは
 “アトピー”の語源は“不思議な”という言葉です。以前はそれほど不思議な疾患だったのでしょうが、今では多くの方に認知されたポピュラーな疾患であるといえます。また優性遺伝でもあるので、その素因を両親から受け継いだ場合、高い確率で発現します。アトピー素因を持って生まれた方は、小児の頃は貨幣状湿疹、肘や膝の裏側の湿疹、喘息などがみられ、大きくなるにつれ、皮疹は顔に現れやすく、湿疹の他にもアレルギー性鼻炎や結膜炎などが起きます。これらの症状のことを“アレルギーマーチ”と呼びますが、実にマーチのように次から次と症状が出てきます。

肌のお手入れ方法
 ところで本題のアトピー肌のお手入れですが、これは年齢性別にかかわらず、日常の正しいスキンケアをすることで、アトピー肌特有のかゆみを軽減し、掻破による皮疹の増悪を抑えることが目的です。湿疹がひどい時やひどい所は皮膚科医の指導の下、外用薬で治療をして頂かなくてはなりません。化粧品には治療の効果はありませんが、皮疹が軽減した時には、化粧品等で、皮膚の表面を保護することで、皮疹のない状態を長く保つ事が出来ます。

毎日のスキンケアで皮膚を守る!
 アトピー肌とは皮膚のバリヤー機能の十分でない肌で、特に細胞間脂質を上手く作ることが出来ない肌です。したがって、日常のスキンケアでその機能を補っていかなくてはなりません。アトピー肌は水分をどんどん蒸散させて、肌の水分量が少なくカサカサした肌になります。皮膚のバリヤー機能の低下は“中のモノを出さない、外のモノを入れない”という皮膚本来の機能の低下でもあります。皮膚にとってありがたくないモノも入ってきてしまい、刺激反応やアレルギー反応を起こします。ですからスキンケアは必要なことなのです。

ケアの基本は保湿と低刺激性コスメ
 アトピー肌のスキンケアは、脱脂と乾燥を避ける事と、使用するスキンケア用品を低刺激性のものを選ぶ事が基本です。脱脂とはシャンプーや洗浄剤の使いすぎにより、元々不完全な細胞間脂質が洗い流され、ますます水分蒸散を促進してしまいます。皮膚科ではワセリンの塗布をすすめます。皮膚の表面を油性の膜で蓋をして水分の蒸散を抑えるためです。ワセリンくらいベットリした油性成分なら水分の蒸散を防ぐ事が出来ますが、サラッとした感触の油性成分では水分蒸散は防ぐ事が出来ません。ですから使用感の良い便利なものをお使い頂くなら、私は保湿剤を配合したクリーム類をお薦め致します。

お手入れの手順とメイクアップ
 具体的なお手入れ方法は、朝は軽く水またはぬるま湯でお顔を洗います。若い方でTゾーンといわれる額や鼻のあたりがべたつくなら、その部分だけ軽く洗浄剤で洗います。その後保湿力のあるクリームを薄く塗布されると良いでしょう。メイクアップは皮疹がひどくなければなさっても良いと考えております。アトピーの方は刺激に弱いので、お使いになる化粧品は必ず試供品やトライアルキットなどで刺激がないかどうかを確かめてから、お使い下さい。それから最近はやりのウォータープルーフや落ち難いことが“ウリ”のメイクアップ用品はクレンジングが大変なのでアトピーの方は注意が必要です。
 私は自分がアトピー素因を持つので自分用に開発した化粧品(トレジャー ブルーのマークシリーズ)を発売しております。一度お試し頂ければ幸いです。

化粧品の選び方
 化粧品を選ぶ時に注意して頂きたいことは、化粧品を塗布した時にチクチクしたり、ピリピリしたり、何か違和感を感じる事があります。これを スティンギング(stinging)と呼びます。スティンギングは、アトピー肌の方によく現れます。ピリピリチクチクするからといって肌に悪い事がおきるとは限りません。いわゆる刺激(刺激性接触皮膚炎を起こす原因)とは皮膚のメカニズム上異なる作用なのですが、我慢して使うこともないので、スティンギングの起き難いものを選ばれるのは懸命です。しかし神経質になるあまり、全ての化粧品が肌に合わないと決め付けることはありません。化粧品は便利なものですから、上手に選んでお使い頂きたいと思います。

頭皮とボディのケア
 顔以外にも、洗髪はシャンプー剤を泡がかろうじて立つくらい少量使い、よくすすぎます。リンスはあまりお薦めしませんが、お使いになるならこれも少量使い、よくすすいで下さい。シャワーなどで洗う場合、シャンプーやリンスが顔や身体に掛からないようにして下さい。人によっては自分の髪の毛が皮膚を刺激して皮疹を作ることもありますので、髪はまとめるようになさるとよいでしょう。
 石鹸やボディーシャンプーも良くあわ立てて使います。柔らかいタオルは良いのですが、スポンジやナイロンタオルなどの水に濡れても硬いもので肌を擦るのは避けて下さい。熱いお風呂も肌には良くありません。お風呂上りは、カサつくところには薄く保湿クリームを塗布されると良いでしょう。

できるだけ肌をいたわって美しく保つ
 皮膚に対する、機械的な刺激も皮疹を増悪する原因になります。下着などの肌に直接着ける物もその材質や硬さなどチェックして下さい。いつも肌を優しくいたわって下さい。時々“肌を甘やかせてはいけない”とか“肌を鍛える”などというスキンケア法を聞きます。健康な肌の方は少々ひどい事をしても皮膚は頑張ってくれますが、アトピー肌は決してそのお付き合いをなさらないで下さい。健康な肌でも人間が毛という便利なものを失って以来、乾燥と紫外線との戦いは避けられないものですし、それに加えて環境は決して良くないのですから、出来るだけ皮膚を大切にして、いつまでも美しく保ちたいと思います。
 毎日の淡々としたスキンケアを皮膚は望んでいるように思います。

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●開発者紹介> 三谷てるみ | 美肌学